【第10話】父さん、母さんが見捨てても僕だけはついていくよ
こんにちは。丸地あいです。
私のブログを見にきてくれて、ありがとう。
前回の記事では、お母さんがお父さんの地方移住について行くのをやめたところまで書いたよね。
覚えてくれてる?もし、地方移住キャンセルって何のこと?と思った人は、今までの記事を先に見てね。
>>過去記事
第1話【やりたいことを諦めなくちゃいけないのが、大人になるってこと?】
第2話【やりたいことを全部やって、人生を楽しみ尽くす!】
第3話【ママと妻だけやってる私、物足りないって言ったら怒られるかな?】
第4話【自分の持っているキャリアや武器を無駄にしたらもったいない】
第5話【家族こそ、お互いの気持ちを言葉で伝えあわなきゃ分からない】
第6話【自分だけがやりたいことをやるなんて、そんなことできない】
第7話【母と娘から、ひとりの女性同士として向き合うふたりの時間】
第8話【ピンチの時、家族は最強のエネルギー補給基地だから】
第9話【始まったばかりの人生の後半戦、どう生きていくか選びたいの】
お父さん、決心したよ
お母さんが「私はあなたと一緒に田舎に行くのはやめて、ここに残ります。」ってお父さんに宣言しちゃうなんて、本当に驚いた。
お父さん、どうするんだろう?
私はまだ結婚したことないから、夫婦のことはよく分からない。31年間一緒に暮らしてきたふたりが、別々の場所で生きていくってこと、こんな短時間で決めちゃっていいものなの?
末っ子の登場
「ただいま~。ああ、腹減った。」
お父さんと私の間にはられた緊張の糸をバッサリ切ったのは、何日かぶりに家に帰ったきた弟、るりの能天気な声だった。
「あれ?どうしたのふたりとも。そんな深刻そうな顔しちゃって。」
「ちょうどいい、お前にも話しておくぞ、るり。父さんが退職したあと、田舎で古民家カフェを開くって話だけど、俺ひとりで行くことにした。母さんはこの家に残る。」
「えっ、そうなの?なんで?」
「母さんは残ってやりたいことがあるんだ。俺がいなくなったら、この家の男はお前だけになるんだから、今までみたいに好き勝手やってないでしっかりしてくれよ。」
「もしかしてお父さん、お母さんから三行半突きつけられたってこと?」
「違う!!」
父と私のふたりから同時に飛んできた大きな否定の声に、ちょっとびっくりした様子のるり。
だけどその後、このいつもふざけてばかりいる弟が口にしたセリフに、今度はこっちの方がびっくりする番だった。
「じゃ、オレが父さんと一緒に行くよ。」
いつのまにか大人になってた弟
急に今まで見たことがないような真剣な表情を浮かべた、るり。驚きのあまりか黙りこくっている父の方へ体を向けると、これまた今まで聞いたことがないようなひた向きな声で話し始めた。
「オレ、就職活動してるうちに気が付いたんだ。オレがやりたい事って、どこかの組織に属さなくてもできるんじゃないかなって。」
るりは現在、就職活動終盤を迎えている大学4年生。理工学部で情報処理を学んだバリバリの理系で、ITエンジニア志望。既に内定をもらっている企業もあるらしい。
「バイトで働いてる会社のプログラマーの半分以上はフリーランスで、自由に働いてる。地方に住んでる人も多いし、中には世界中を旅しながら仕事してる人だっている。」
「これからは、定時に出社して、残業して帰るなんて働き方は古いし効率も悪い。自分の好きな場所で、好きな時間に、好きなように仕事して、仕事以外のやりたい事もどんどんやって生きていく、っていうのが当たり前になっていくはずだよ。」
るり、あんた…いつのまに…いつのまにそんなこと考えられる大人になったの?
しかも、「やりたいことをどんどんやって生きていく」って、それって私がはるかさんから教えてもらったマルチライフそのものじゃない!
ITだけじゃない、料理だって
「るり、あんたいつからマルチライファーになってたの?」
思わずそう叫んだ私のことばを無視して、るりは話を続けた。
「それに、オレはパソコンと同じくらい包丁が好きなんだ。ITエンジニアかコックか本気で悩んでいたくらい。」
そう、私たち姉弟の中でダントツに料理が好きなのは、姉のももでも私でもなく、弟のるりだった。積み木やブロックよりも、料理上手な母の隣でハンバーグをこねたり、クッキーの型抜きをする方が好きな男の子だった。
「だから、父さんが田舎で古民家カフェやりたいって話聞いたとき、頭の中にそこで料理してる自分の姿が浮かんだんだ。当然母さんが一緒に行くだろうと思ってたから、すぐに打ち消したけど。」
そうか。そうだったのか。確かに、るりはコックの見習いみたいなことを始めて大学に行かなくなっていた時期があった。その時は結局留年しちゃって、学業に専念するようにってお父さんが見習いは辞めさせたんだけど。
「オレ、コックかITエンジニアか、どっちかしか選べないと思い込んで、料理のことはすっぱりあきらめるつもりだった。だけど、色んな働き方してる人がいるってこと知ってから、どっちも諦めなくていいんじゃないかって、そう思うようになったんだ。」
ちょっと、るり!あんたやっぱり私より先にマルチライファーへの道、歩き始めてたんじゃないの?
父と息子で古民家カフェってサイコー
もう黙ってられなくなった私は、るりの話しをじっと聞いている父にものすごい勢いでまくし立てた。
「お父さん、私はるりの話に賛成だよ。大賛成だよ。るりが言ったように、これからの時代は自分の好きな場所で、自分の好きな時間に、自分の好きなように仕事していくのが当たり前になってくると思う。」
「朝から晩まで会社に縛られて、休日はただ疲れをとるためだけで時間が終わっちゃうなんて働き方、もう時代遅れなんだよ。」
「それに、ITに強くて料理も上手なるりがいたら鬼に金棒だよ。お店のホームページも看板メニューも心配いらないじゃん。何より、父と息子でやってるオシャレで美味しいカフェなんてあんまりないから、きっと評判になるよ!」
興奮して、どんどんアツくなっていく私とは対照的に、冷静そのものの声で父が私にストップをかけた。
「あい、お前は少し黙っていなさい。今はるりと話してるんだ。」
ああ、またやっちゃった。いつもひとりで先走っちゃうのが、私の悪い癖だって分かってるのに…
父親の想いとは…
「るり、お前の話はよく分かった。これからの時代、俺みたいにずっと同じ会社に勤めて、朝から晩まで働くことが時代遅れだと言われるのも、理解しているつもりだ。」
「お前が一緒に店をやってくれたら、あいが言ったように繁盛間違いなしだろうとも思う。俺ひとりじゃ、ホームページも看板メニューも出来上がらないだろうしな。」
父はそこまで言うと、何かを振り切るようにきっぱりとした口調でるいに告げた。
「でも、お前を一緒に連れて行くわけにはいかない。」
お父さん、どうして?
~一緒に田舎へ行って古民家カフェを手伝いたいと言った末っ子の申し出を、きっぱりと断った父。一緒にカフェをやるにはこれ以上ないくらい強力な助っ人なのにどうして?~
★ 丸地家のマルチライフストーリーについて ★
主人公の丸地あいとその家族が、人生に起こる様々な出来事にマルチライフ的方法論で立ち向かっていく物語です。
あいやその家族は特別な存在ではなく、きっとあなたのまわりにいる人や、あなた自身と重なる存在ではないでしょか。
一緒に丸地家のマルチライフストーリーを見守って頂けたら嬉しいです。
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マルチライファー’s CLUB 0期メンバーで、スイーツと短歌をこよなく愛する。ことばのパティシエ ☆YUKO でした。