【第9話】始まったばかりの人生の後半戦、どう生きていくか選びたいの
こんにちは。丸地あいです。
私のブログを見にきてくれて、ありがとう。
前回の記事では、お母さんがマルチライファー宣言したところまで書いたよね。
覚えてくれてる?もし、マルチライファー宣言って何のこと?と思った人は、今までの記事を先に見てね。
>>過去記事
第1話【やりたいことを諦めなくちゃいけないのが、大人になるってこと?】
第2話【やりたいことを全部やって、人生を楽しみ尽くす!】
第3話【ママと妻だけやってる私、物足りないって言ったら怒られるかな?】
第4話【自分の持っているキャリアや武器を無駄にしたらもったいない】
第5話【家族こそ、お互いの気持ちを言葉で伝えあわなきゃ分からない】
第6話【自分だけがやりたいことをやるなんて、そんなことできない】
第7話【母と娘から、ひとりの女性同士として向き合うふたりの時間】
第8話【ピンチの時、家族は最強のエネルギー補給基地だから】
張りつめた空気に包まれた我が家
自分の父親と母親が緊迫した雰囲気のなかで、互いを見つめ合ってる状況のとき、子供ってどうしたらいいと思う?
冗談のひとつでも言って、場をなごませる?それとも、真剣な顔で『ふたりとも、落ち着いて。』って諭す?はたまた、黙ってその場を去る?
はるかさんのセミナーから帰ってきて、『あなたには悪いけど、私はあなたと一緒に田舎へ行くのはやめます。この家に残って、自分の人生を思いっきり生きていきます。』ってお母さんがお父さんに向かって宣言したときの状況が、まさにこれ。
私、完全にフリーズしちゃって動けなかった。冗談を考える余裕も、ふたりの間に割って入る勇気も、部屋を後にする機敏さもなくて。
だって、まばたきひとつするのもはばかられるくらい張りつめてたんだもん。だから、カウンターに置かれたサボテンと同じようにじっとしているしかなかった。
じっと、ふたりの話を聞いているしかできなかった。
お母さんの人生って…
帰ってきてからコートを脱ぐのも忘れていた母が、我に返ったようにコートを脱ぎ、少し落ちいた様子でソファに腰を下ろした。
落ち着きを取り戻した母とは対照的に、今だに状況がのみ込めない様子の父。ソファに座るべきか、それとも立ち続けているべきかすら決められないみたいに動揺していた。
「31年前、あなたも私もまだとっても若かったですね。お互い、大学を卒業して社会人になったばかり。あなたは好きだった車を作る会社で、毎日毎日一生懸命仕事して。私も希望どおり小学校の教員になって…」
そう、母は大学の教育学部卒業で、結婚するまでの2年間、小学校の先生をしていた。母から詳しく聞いたことはないけど、私が中学生くらいの時、おばあちゃんが教えてくれた。
そういえば、おばあちゃんがいつだったか『あの子は、学校の先生を辞めたくなかったと思うよ。』って言ってたっけ。そのときは気にもとめなかったけど…
「もしかして、あのとき俺がお前に教師の仕事を辞めさせて、おやじの面倒みさせたのを恨んでいるのか?」
「まさか。私はあなたを恨んだことなんて、ただの一度だってありません。むしろ、今まで必死に働いて私たち家族を守ってくれて、感謝していますよ。」
確かに、母の口から父に対する愚痴や文句を、今まで一度もきいたことがない。母はいつも私たち姉弟に対して『お父さんに感謝しなさい。』と言って聞かせていた。
私、お父さんに感謝できてたかな?私…お母さんに感謝できてたかな?
しあわせな人生をありがとう
「教員を辞めて、病に倒れたお義父さんのお世話をするって決めたのは私です。教員の代わりはいくらでもいたけど、お義父さんの看病をするのは私しかいなかったんですから。自分の選択に後悔なんかしていません。」
私の父方の祖父は、私が生まれる前に病気で亡くなった。祖母はそれよりも前、父が高校生のときに、やはり病気で亡くなっていた。だから、私には父方の祖父母との思い出が全くない。
ただ、昔からよく父が酔っぱらっては、私に向かって『あいは、死んだおばあちゃんによく似てるな~。』とうれしそうに言っていた。
なんか『お前は母さんより、父さんの血を濃くひきついでいるんだぞ。』って言われている気がして、高校生くらいまでは『そんなことない!』って反発してたけど。
だけど、残ってるおばあちゃんの若いころの写真、確かに私に似てるんだよね。あっ、逆か。私がおばあちゃんの若いころに似てきてるんだね。一度も会ったことがない人に自分が似てるって、不思議な感覚。なんだかおばあちゃんのことは、自分の祖母っていうより、親友みたいな気もするな。
おばあちゃん、私どうしたらいいの?私のせいで、私がお母さんをセミナーに誘ったせいで、ふたりが別れるようなことになったら…思わずおばちゃんに心の中で助けを求めっちゃったよ。
私はやっぱり、子どもたちといっしょにいたい
「子供たちは3人とも、もう立派な大人です。私の母親としての役割はもうほとんど終わったのかなって、思っていました。ほっとしたような、ちょっぴり寂しいような、そんな気持ちで。でも、これって母親なら誰しも通る道なのかなと納得してたんです。」
「でも、あいが連れて行ってくれたセミナーで話を聞いて、気付かされたんです。もも、あい、るりの3人の子ども達からもらったエネルギーのおかげで、私は今までしあわせに生きてこれたんだなって。」
「それから、思い出したんです。結婚する前に学校で教えていた子供たち。彼らからもたくさんのエネルギーをもらって、教師をしていられたんだなって。」
お母さん、はるかさんの話を聞きながら、私の隣でそんなこと考えてたんだ。
「あなたには申し訳ないけど、私は田舎でのんびりカフェをやるより、子供たちに囲まれて生きてる方がしあわせなんです。子供たちからエネルギーをもらいたい、そして、私も彼らに少しでもエネルギーを与えたい。今はその気持ちしかないの。ごめんなさい。」
「子供って、その歳でまた学校の先生にでもなろうっていうのか?」
「いいえ。もちろん、こんなおばちゃんを雇ってくれる学校があるとは思っていません。でもね、べつに【学校】じゃなくても、子供たちに何かを教えることはできると思うの。」
「何かって、何をどうやって、どこで教えようっていうだ!」
「それを今から考えていきたいの。人生100年の時代なんだから、55歳の今って、ちょうど折り返したばかりの位置でしょ。人生の後半戦、どう生きていくか、私もあなたに負けないように、真剣に考えたいと思う。」
母はそこまで言うと、夕食の材料を買ってくると言って、出かけて行った。
お父さん、ごめんなさい。でも…
リビングに残された私は、そっと父に目を向けた。いつもはソファにどかっと腰をおろして【我、ここにあり】という存在感を放つ父が、このときはひと回り小さく見えた。
「お父さん、あの…なんて言うか、ごめんね。」
自分でも気づかないうちに、私はそんな言葉を口にしていた。それまで私がいることを忘れていたかのように、父がびっくっとした様子で私を見た。
「あい、いたのか…」そう言って、下を向いて黙ってしまった。
どのくらい時間が経った頃だろう。お父さんが顔を上げてぼそっと、ひとこと発した。
「あい、父さん決めたよ。」
~第二の人生計画の修正を迫られた父が、決心したこととは?どうなる、丸地家?!~
★ 丸地家のマルチライフストーリーについて ★
主人公の丸地あいとその家族が、人生に起こる様々な出来事にマルチライフ的方法論で立ち向かっていく物語です。
あいやその家族は特別な存在ではなく、きっとあなたのまわりにいる人や、あなた自身と重なる存在ではないでしょか。
一緒に丸地家のマルチライフストーリーを見守って頂けたら嬉しいです。
★マルチライフに興味を持った!もっと知りたい!という方はこちらから公式メルマガに登録してください★
>>無料公式メルマガ
マルチライファー’s CLUB 0期メンバーで、スイーツと短歌をこよなく愛する。ことばのパティシエ ☆YUKO でした。